日々の喜怒哀楽を綴ります。

『蜩ノ記』

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遅れ馳せながら『蜩ノ記』読了。小説を読んで涙したのは、何年ぶりだろうか。戸田秋谷が腹を切る、その意味が葛折りのように幾重にも重なりあい、冒頭からの様々なシーンが「切腹」に一気に重層をなす。こんな迫力のある「ラスト」の味わいは、56年生きてきて初の体験だ。凛と形容すべきか、浄と喩えるべきか。粛にして爛、静にして騒なり。これを「武士道」「侍」の正道と褒めちぎるならば(つまり、その程度の「読み」ならば)、愚者の誹りを免れまい。筆者は、みごとに「現代」の様々な意匠を「時代劇」に凝縮せしめた。何の解説も評論も要らない。真実はただ一つ…読まない者は不幸である、ということ。
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