日々の喜怒哀楽を綴ります。

サンバ

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『最強の二人』とはうって変わって、強烈に重い。フランスの排外主義と人種差別主義、そして、独特の管理社会という同等の背景から、かくも違った作品が並列されるのか…ずっとそんな思いに襲われながら、スクリーンの前で息の詰まりそうな二時間強を過ごした。
真面目に働こうがヤクザをやろうが、入管の魔の手は常に「移民」を襲う。セネガル出身のサンバ(踊りと同じ名前…これもこの作品の巧妙な伏線だ)はフランスに来て10年、レストランで下働きをしながら家族に送金する日々が「収監」によって崩壊した。支援グループの懸命な努力にもかかわらず、サンバは裁判で「国外退去」を命じられてしまう。しかし「退去命令」も、様々な在留資格のうちの一つにすぎない。つまり、それほど「不法滞在」が多いということ、ならびに、不法滞在者は様々な「生」を生きているということを私は本作品から知った…。
偽造在留カードを手に入れて日雇い仕事で稼ぐうちに、ウイルソンという友人を得てサンバは「不法滞在」渡世の悲喜交々を身に纏う。そして、支援者の女性・アリスと恋に落ちる。彼女も「壊れた人」で、キャリア・ウーマンとしての順風満帆が鬱の要因となり「回復プログラム」の一環として移民支援に係わっていたのだった。「有給治療期間」が終わる頃、二人は良きパートナーとして、絶望の淵から希望を語るまでになっていた。しかし、サンバは入管に収容されていた時に知り合った友人・ジョナスとの柵で、ある夜「死亡」してしまう。
ところが、サンバは生きていた。しかし、その「生」は如何に証明されるのか?偽造カードを購入する度に変わる名前、死んだのは「サンバ」の資格を持っていたジョナスで自分ではなく、自分は「政治亡命10年」の資格をもったジョナスとして生き残ったのだった。
「俺は誰だ?」「あなたが誰であっても、私はあなたを愛してる」--自己喪失が絡み合う管理社会のなかで「愛」だけが信じるに値する…その言辞がちんけなクリシェになりえないのは、この作品が「現実のフランス」という重い荊冠を見事に描いたからに他ならない。サンバは金、李、朴、高、梁…なのである。
『サンバ』公式サイト