日々の喜怒哀楽を綴ります。

猫が/で考える。

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ゴーリキーは『母』を書いた。ロシア革命前夜、金属工のヴラーソフは過酷な労働と貧困に打ちのめされ、酒に溺れ妻子に暴力を振るう暮らしをしていたが、息子のパーベルは地下活動に参加していた。ある日、工場でスト破りに包囲されて乱闘となり、暴力団に雇われていたヴラーソフが射殺される。母は「危険なことは止めて」と懇願するも、息子は逮捕され、裁判で懲役刑が言い渡される。「真実はどこ!」母の悲痛な叫びが法廷に響いた。母は変わった。メーデーの日、街の隅々から次々とデモの隊列に加わってくる労働者達の中に、母もいた。赤旗が翻り、それに呼応した多くの囚人達が射殺されたが、脱出に成功したパーベルは母と抱き合う…その瞬間、騎兵隊の銃弾が襲った。赤旗を持って隊の前に立ちはだかった母も、剣の一閃を浴びた▲三浦綾子も『母』を書いた。特高に虐殺された小林多喜二の母・セキは、何も悪い事をしていないのに殺された我が子とイエスの姿を重ね合わせて、信仰を得る。神に「白黒つけてくれ」とセキは祈った▲「生きるに値しない命」を是とするこの国家が殺すのは、アカ・ヤクザ・カゲキハ・ショウガイシャ・フテイセンジン、如何様にもなる。そして、共謀罪は幾千万の「母」を産み出すだろう。
(『まねき猫通信』No.178 巻頭言)